編集部ブログ

2020.05.15

なぜ医療崩壊寸前? 必須「優秀なかかりつけ医」

緊急事態宣言発令前より、ずっと「医療崩壊寸前」が懸念されています。なぜ医療崩壊寸前(すでに医療崩壊している病院も?)なのでしょうか? なぜなら、そもそも普段から医療現場は、パツパツの状態で余力がないのです。普段でも、病院では予約しても長時間待たされ、医療フタッフにも余裕のなさを感じることが多くあります。そんなところへ、感染症流行という負荷がかかればひとたまりもありません。つまり、医療現場が通常の診療に余力のある状態にならなければ、いざという時すぐにパンクする可能性があるというわけです。

その解決策の一つに、「かかりつけ医」「総合診断医」の充実があります。医療改革は、実は古くて新しい課題です。総合診療パイオニアで、日本の医療システム改革の担い手の1人である竹村洋典Dr(現・東京医科歯科大学総合診療科教授)をインタビューした『救いの総合診療医―新・総合診療専門医が日本の医療を変える! 』では、この問題を取り上げています。竹村洋典Drは、「優れたドクターG(総合診療医)に近隣で、いつでも受診できる、個人的な事情にも配慮してくれる、そして、何より的確に病気を診断し、必要な場合は適切な基幹病院を探し、原因探しの毎日から救ってくれる、そんな未来がやってくる」そんな夢に向かって、猛ダッシュしているドクターです。

救いの総合診療医―新・総合診療専門医が日本の医療を変える! 』より引用 ※出版当時、竹村洋典Drは、三重大学医学部附属病院 総合診療科 教授

◇これからの医療改革を推進する総合診療医

 高度でありながら幸福でない日本の医療

今日の日本の医療レベルは、海外と比較して決して劣ることはありません。アメリカ、ドイツ、フランスに続き、世界トップクラスです。にもかかわらず、日本の国民は、今の日本の医療に満足していないといわれています。地方では、医師不足が深刻化しています。都市部でも、救急外来で受診が断られる、慢性的に入院病床が確保しにくい、医療を必要としている患者がすぐに入院できない、医療機関では予約を入れても待たされ、待っても「3分間診療」と揶揄されるような状態です。待ちに待った診療室に入っても、医師はパソコンの画面を見ながら「どうしました?」と問い、振り向きもせず急いで患者の答えを入力するのを見て「顔色も見なくて診断できるのか」と思いつつ、本当に言いたいことも言えず、本当に聞きたいことも聞けずに帰ってくる。そして、さらに次の病院を探して受診する。このように医療機関を放浪っている患者は、自身も、そして、受診する医師側も疲労させてしまいます。そもそも、日本人は、どうしてこんなに頻繁に医療機関に通うのでしょうか。どうしてこんなに頻繁に検査や画像診断が行なわれるのでしょうか。そして、どうしてこんなに多くの薬を内服しているのでしょうか。これでは、日本人が健康感を感じられないのも無理はありません。また、健康感は、幸福感に直結しますから、日本人は幸福感を感じられない人生を送っていることになります。<本書12ページより>

◇医療政策の提言

 国が政策として期待する総合診療専門医

竹村 国が医療費を抑えるための一つの方略として期待しているのが、総合診療専門医であると思っています。国が総合診療医の数を増やそうとしているのは、間違いのない方向性です。それは、国民の誰に聞いても、総合診療医は必要がないとおっしゃらないし、現に、これまで総合診療医の育成をする上で逆風にあったことはまったくありません。逆に国や県が総合診療医の育成に必要なさまざまな事業をいろいろと支援して下さっています。医療や年金など社会保障費の支出が増大していて、消費税をすべて社会保障に充てるなど、社会保障をとりまく状況は困難になっていますが、総合診療医の育成に関しては、予算をつけて頂いています。医療費抑制に国も真剣なのだと思いますし、総合診療に期待をしていると思います。厚生労働省の審議官の人が、「見学させて下さい」と三重大学に来られることもありますし、三重県の知事と英国の総合診療医を視察に行ったこともあります。三重県の知事にも総合診療に対して、大きな期待を寄せて頂いております。本当に感謝しても感謝し足りない状態です。もう、これだけ地域の住民が困っているし、日本全体が困っている。日本の国力が落ちているのに、高齢者人口が増え、医療費が膨大に膨れ上がっていく。と言って医療費の「人頭払い制」を導入することもできない。「フリーアクセス」を止めることも得策ではない。病床数を減らすことも本末転倒になる可能性がある。国は、医療費を削減することと、医療の地域格差を何とかするために、総合診療医のさらなる育成に支援をし続けてくれるのではないかと思います。そうでないと現在の医療の諸問題は解決できないと思います。<本書113ページより>