編集部ブログ

2020.04.26

八重桜の季節

ソメイヨシノより濃いピンクで、逞しい印象の八重桜。ここ編集部の近くでも八重桜の花びらが道路に舞い落ちています。

森神逍遥先生の『侘び然び幽玄のこころ―西洋哲学を超える上位意識―』の「第一章 侘び」の中から、引き続きご紹介します。

■輪廻する四季(続き)

然(さ)びたるソメイヨシノが散り侘びて、八重が大味の趣を以て田舎の道を飾るのである。山の中に押し分けて入れば、山桜が葉を落とすことなくその花は柔らかい葉と重なって薄い緑色をして咲いている。当時の筆者は、ソメイヨシノ以上にこの山桜が好きで、一人山の中の道なき藪(やぶ)を進んで見つけ出し、一人悦に浸っていたものだ。

そう言えば、ソメイヨシノが散る頃に暑苦しい程に咲き重なり誇る八重桜を母は趣がないと好むことがなかった。千年も二千年も三千年も昔から、そういう無教養ではあっても美を見出せる親の一言が子に侘びや然びの薫陶を与えたのである。その意味では、母が毎朝工夫した剣山の生け花は筆者の美意識に大きな影響を与えていた。
麦畑にはひばりが舞い下り、子どもたちはその中で隠れんぼをしたものだ。いま想うと百姓に申し訳なかった。その花の雄蕊(おしべ)は黒く服や顔に付いた。菜種(なたね。菜の花)や蓮華には蝶が舞い蜜蜂が飛び交い、茎(くき)には緑色のアブラムシが列をなし、トンボは空高くに孤高の様を見せる……。

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