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第七章 想い出は永遠に…
 
日本は私の故郷
 私が四十二歳の頃のことです。トマトペーストと竹の子の缶詰を作っている商社の出張で、初めて日本の土を踏みました。初めて日本に行った時は嬉しかったものです。東京でも大阪でも税関で日本人だと思われ、「お帰りなさい」と言われたのが懐かしく想い出されます。「ずいぶん長いことこちらに留学なさったんですか?」、「大学はどこですか?」と聞かれました。私は「初めてお国の土地を踏みますの」と言いました。日本の皆さんは皆親切でとても良くしてくれて大変助かりました。

 この時、私はずっとずっと行きたいと思っていた靖國神社に、いの一番に行きました。なぜなら、国のために惜しげもなく命を犠牲にした霊に少なくともありがとうと言いたかったのです。また、戦死した教生の竹田先生に一度手を合わせたいという想いもありました。
 表参道を通って、玉砂利を踏んで、台湾の阿里山の檜で作った鳥居をくぐりました。それはもう本当に感激でした。そして、瞑目し手を合わせながら竹田先生を偲びました。

 日本ではあちこちセールスに回ったのですが、二度目に日本に行った時に、たまたま、国民学校の時お世話になった小谷先生の住んでおられる鳥取に行くことになりました。鳥取の丸神海産という会社でした。
 小谷先生は必ず台湾に帰って来ると言ったのに、十年待てど二十年待てど帰って来ませんでした。「先生の嘘つき」と思いました。私は、先生に今度出逢ったら「先生の嘘つき」と言ってやろうと心に決めていました。

 そこで、私はこれはしめたと思い、思い切ってそこの社長さんに「小谷霊明という先生がいたのですが、調べて頂けないでしょうか」と頼んでみました。私は、先生の住んでおられる所が鳥取の日南としか覚えていなかったのですが、社長さんは快く引き受けてくれました。あちこちに電話を入れてくれて、遂に小谷先生の家を探し当ててくれ、早速電話をしてくれました。

 電話には奥様が出られたそうで、奥様によると、残念なことに先生はつい先月亡くなったということでした。悲しかったです。
 会社の人がお墓参りに行きますかと聞いて下さったのですが、私は「行きません」と言ってしまいました。なぜなら、私の先生はいつも私の心の中で生きているからです。

 日本は私の故郷です。私には日本と台湾、祖国が二つあります。どちらが私の心を余計に占めているかというと、どちらとも言い難い。どちらも同じです。半分半分です。
 だから、日本で事件があったと聞いたらやはり悲しいし、今、何かの試合で日本の選手が外国と対戦していると、日本を応援してしまいます。
 日本時代とは私にとって、素晴らしい時代であり、私の人生の道標をこしらえてくれたと言っても過言ではありません。私の向かうべき人生の指針を与えてくれました。
 私の心の中には、いつもとても綺麗な日の丸の旗が翩翻とはためいています。

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児玉源太郎、台湾

 

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