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第四章 戦後の混乱

除 隊
 終戦直後、私は台湾独立運動の影響で、九月二十日ぐらいまでは、トーチカの建設をしていました。まだ戦うつもりでいたのです。その後、軍隊は解散となり、除隊したのは九月二十三日のことでした。
 生死を共にした仲間と、元気でな、頑張れよ、と言葉を交わし、皆それぞれに不安を抱えたまま、帰郷していきました。

 一人になった私は、母に会うため、すぐに故郷へ向かいました。除隊の時に退職金として七百七十円もらいましたので、これを旅費にあてました。当時、鶏一羽が百円ぐらいでしたから、まあ一カ月くらいは何とか食べられるという程度の額でした。
 母は、嘉義の近くの梅山というところに、妹と一緒に疎開していましたので、まず嘉義に向かいました。高雄から嘉義までは大した距離ではありませんが、爆撃で線路があちこちで寸断されており、何度も汽車を乗り継いで、あちこちで停まりながら、二時間ぐらいかけてに着きました。

 着いてみたら、故郷の嘉義市は一面の焼け野原でした。終戦直前の四月の爆撃でやられてしまったのです。駅舎も半分が壊れていました。もう町が何も無いのです。
 茫然として、レンガ塀の上に腰を下ろし、変わり果てた町をただ眺めて、じっとしていました。いろいろな考えが浮かんでは消えていきました。

 どのぐらいそうしていたでしょうか。それから、ようやく気を取り直し、元気を出して、母を捜しに行きました。
 母の消息は分かりませんでしたが、どこかに逃げて、きっと生きていると思っていました。

 梅山まで、嘉義からさらに汽車と徒歩で二時間の道のりでした。人に尋ねながら行き、やっと母と再会できた時は嬉しかったですね。母も、私が無事に帰ってきたことを、涙を流して喜んでくれました。無事に、こうして再会できたことだけでも有難いと、心底思いました。

 けれど、それも束の間、それからは生活苦です。明日からどうやって生きていくか。ほっとする間もありませんでした。とりあえずは無事に会ったというだけで、今度は先の心配です。希望は宙に浮いていました。 

 弟は、学徒兵で基隆の方へ行っていましたが、私と同じ頃に除隊して戻ってきて、台北で再会しました。まだ勉強中でしたから、西松組に居候させてもらい、あと一年勉強して卒業できるように計らいました。
 これから一家をどうやって支えていくのか、何よりも、これから私達はどうなるのか、不安は増すばかりでした。

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