空手は天職だった

この度お二人で新団体を組織され、盧山館長、廣重最高顧問として新たな出発をされることになりました。

本日は、この門出にあるお二人の心境や、今後の抱負などについて語って頂きたいと思います。

さて、盧山館長は、一時、極真以外の場で修行されていましたね。

盧山 私は、昭和四十八年の第五回全日本大会に優勝したのが二十五歳でしたから、極真に復帰したのが昭和四十七年と、今から約三十年前になりますか。最初は昭和三十八年に極真に入門したのですが、その後、四、五年極真からちょっと遠ざかっていました。

その後の、記念すべき第一回世界大会では、決勝は盧山館長と佐藤勝昭氏との間で行われました。優勝は佐藤氏でしたが、あの試合を見れば盧山館長の方の優勝でしたね。

盧山 (笑)。大山総裁が後に色々と寸評されていましたが、まあ、実際勝負というのは、判定になったら人が決めるものですからね、その人によって評価は違いますから。

決勝の時の主審は佐藤氏が慕っていた中村忠師範でした。この時の主審が大山茂師範だったら、結果は逆だったと思いますね。

盧山 こう言っては何ですけれども、負けて非常に悔しい思いをしたことは事実です。私自身は負けていないと思っていましたけれども。それで、その思いを四年後の第二回世界大会にぶつけようと、そこからのスタートになったんです。

しかし、もしあの時、私が優勝しましたら、恐らく今の盧山はなかっただろうという気がします。

というのは、やっぱりチャンピオンになったという自分の名誉とプライドを守らなくちゃいけないという気持ちになりましてね。人生何が幸いするか分かりません。本当に、それを真剣に思います。あのまま優勝していたら、もしかしたら、空手界からちょっと離れたところにいたかも知れないなという感じがします。

廣重 私もそう思います。盧山先輩は優勝していたら、空手から足は洗わないまでも、指導する立場にはなっていなかったと思います。

盧山 そう。俺はもうチャンピオンなんだという、その自分なりのプライドのためにね。

廣重 それと、あと自分の稽古だけやれば良いんだと考えていたでしょうから。先輩は昔からそうでした。先輩を極真の支部長に引っ張り込んだのは私なんです。先輩は多くの人に教えるよりも一人だけで稽古場へ行かれるのが好きですから。

盧山 元々、自分の修行という意味では、私は空手を死ぬまでやるつもりでいたんです。ただ、道場の経営とか、組織の中に入るとか、そういうことは元々性に合ってはいませんでした。

廣重 ですから、先輩は恐らく、全然違う世界に行って、その傍らで空手を続けるつもりだったのでしょう。しかし、自分はそうしてほしくないと考えていたんです。というのは、私は極真のためにこの盧山初雄という人間がいた方がいいと思ったんです。盧山先輩は部外者でいるべき人ではないと考えました。

まあ、私は昭和五十三年に城南支部を設立して、師範として指導を始めました。それまでの極真の支部というのは、何か看板のあるところ、例えば、自分の故郷に帰って、親に出資してもらって道場を出すとか、あるいは極真のブームに乗って道場を出すとか、極真関係の有力者がいる地方に道場を出すというのがほとんどでした。芦原英幸先輩は四国に行きましたが、四国は元衆議院議員で極真の会長をされていた毛利松平先生の地元でした。

ですから、ブームが終わった時期に全くコネもなく、何の地盤もないところに支部を出したというのは、恐らく私が最初だったと思います。それで、まあ、一生懸命にやって、何とか経営も軌道に乗ってきました。

その頃というのは第一回世界大会が終わった頃でしたが、盧山先輩は自分の稽古をずっと続けられていました。それで、私はその時が盧山先輩を支部長として引き込むチャンスだと思ったんです。

それで、先輩に、「何の地盤もない、何のコネもない私がやっているんですから、先輩も絶対に埼玉でできます」と説得したんですよ。まあ、先輩もその話を聞いて、その気になってくれました。

盧山 私もその時には、結婚するという事情もありました。結婚した女房がたまたま極真の有段者であったというのも、大きな理由の一つでした。しかし、その時の廣重師範の気持ちは初めて聞きました。

私は、澤井健一先生から、王郷齋老師(一八八六~一九六三年、形意拳の達人、郭雲深に入門、中国武術の真髄を究めたとされ、後に意拳を創始)という人がいて、もうかなりの年齢になっても弟子達をポンポンと投げ飛ばすという話をいつも聞いていました。私も名人・達人の道を目指そうと考えていたので、自分もそのくらいの心境に達した時に、数人の弟子を教えようかと考えていました。ところが、そのあたりから、人生の歯車が狂ってきたのかな(笑)。

しかし、廣重師範には感謝します。こういう世界で、自分がやっていくというのは、天職だったのではないかという気もします。


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