第一章 悪童と呼ばれて 7
どん底からの出発
「何でうちだけが、何で俺だけが、こんな目に遭わなくちゃいけないんだ」
この叫びこそが私の原点だった。
俺の家は村はずれにあった。小さな家だ。
今にも崩れそうで、知らない人が見れば、まるで廃屋のように見えただろう。
中には、土間の他に、いろりのある小さな部屋があるだけだ。
ひび割れた戸板の隙間からは月や星まで見える始末で、いつもすきま風が吹き込んでいた。実際のところ、家の中にいるのも外にいるのも、そう大して変わりはしなかったのである。
夏のうちはまだ良かった。虫に刺されて痒いのを我慢すれば、なんとかそれで済んだ。生きるの死ぬのという程のことではない。結構慣れてしまうものである。
問題は冬である。栃木の山村だったから、寒さは身にしみて厳しかった。
毎年、山から冷たい風が吹き下ろしてくると、凍りつきそうなすきま風が吹き込んで来て床下からは痺れるような冷気が伝わってきたものだ。
寒いのではなく、痛いくらいだった。
夜になると、綿もほとんど入っていないような薄いせんべい布団にくるまってはみるのだが、それで充分な暖がとれるはずもない。
せめて家族全員がしっかりと身を寄せ合い、お互い震えながら必死に寒さに耐えるしかなかった。頑丈に生まれついていた俺にとっても、さすがにこれはこたえたものである。
しかし、それ以上に辛かったのは世間の風あたりだった。
俺の家に向けられる近所の目は暖かいものばかりではなかった。
何もなかった俺の家では、隣近所からしょっちゅう米や味噌を借り歩いていたが、さすがにそれが重なってくると、いい顔をされるわけがない。なにしろ物のない時代で、貸す方も、大金持ちではないから、無理もない話なのである。
しかし、お袋は気の強い人だったから、相手が貸し渋るようだと声を荒げて叫んだ。
「もらうんじゃない、借りるだけじゃないか。そこにあるのに貸そうとしないようなやつの所からなんて、もう二度と借りるもんか」
これでは、借りられるものも、借りられなくなってしまう。
俺の家は、段々と一部から村八分のような扱いを受けるようになっていった。
だから、もしも俺が悪戯でもしようものなら、「やっぱり」という感じで白い眼を向けられたものだ。
俺にはそれが我慢できなかった。同じような悪さをやっても、自分がやるのと、よその子がやるのとでは、人の見る目が全く違ったのである。
そんなバカな話があってたまるか。
全ては貧乏のせいだと思っていた。家が貧しいから悪く言われ、家が貧しいから冷たくあしらわれ、家が貧しいから見下される。
そう思うと、俺はたまらなく悔しかった。
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